【武田邦彦】トリチウムを薄めて海洋放出は規制がないのと同じ

このページは、武田邦彦先生が話す「原発汚染水⑤」です。「トリチウムを薄めて海洋放出は規制がないのと同じ」という内容をご覧ください。

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原発汚染水⑤


今回はいよいよトリチウム汚染水の希釈の問題です。基本は、常に被爆は1年1ミリシーベルトで、これは国際的に決まってるんです。

人間1人あたりの被爆量が1年1ミリシーベルトに留まるようにする。これを決めたことによって、例えばフランスから運ばれてくる飲料水を自由に安心して日本で飲めるとか。

 

日本で取った魚とか貝を自由に他国に輸出できるというようなことになって、国際貿易にも非常に寄与したわけです。

ただ、各国によって事情が違いますので、具体的なものについては、例えばトリチウムの規制値っていうのについては各国によって違うわけです。

 

日本の規制値、例えば海に放出する規制値が高いとか低いとか言うだけではなかなかわからないので、例えば日本はトリチウムに関する規制値ってのはないんです。

どちらかというと、もう誰でもどこでも水を飲むだろうとなっておりまして、トリチウムを放出するところに規制値を設けております。

 

アメリカなどは、放出する規制値は緩いんですが、水道水の規制値は非常に厳しいんです。日本のような小さな国は、川に放出したら直ちに水道水の中に入っていくというようなことがあります。

それで、全体の規制値を厳しくしてるっていうようなところもあって、それは専門家が考えることなのです。専門家以外の国民が重要なのは、1年1ミリシーベルトになりますか?ということなんです。

 

それが、タンクがいっぱいになったからとか、地下水の流入が止められないからとかいう、人間の健康に関係ない理由で緩めてもらっては困るわけです。当たり前ですけど。

例えば、なんでも良いです。毒物はなんでも良いですけど、例えば添加物。添加物の規制値は、あくまでも食品添加物の規制値は、あくまでもそれを食べる人の健康を考えて決めなくてはいけません。

 

「ちょうどこの添加物はタンクに入らなくなったから流しますよ。」なんてやつは、もちろん今までも認められたことはないんです。

海に薄めるは規制がないと同じ

現実はどうかって言うと、実は日本の場合、1960年、正しくは1956年から高度成長時代が始まりました。

それまでに取り扱っていた量とは全く違う量を化学工業とか鉄工業とかそういうとこで使うようになった。そうすると流す量がどんどん増えてきたわけです。

 

それで、汚い毒物もいっぱい出てきたんです、実際。最初の頃は、理屈がよくわからなくて、私の経験では、1970年くらいまでは、工場などでは毒物が発生するとそれをどんどん海水で薄めて、規制値以下にして流しておりました。

 

ところが、そのうち検討が始まりまして、非常に当たり前のことですけれども、希釈して流すってことになりますと、規制が事実上ないのと等しいんです。

例えば、ある毒物がある工場の中に発生した。それが規制値の100倍だった。

 

「100倍か。」と課長さんが言って、「じゃあその毒物はどのくらいあるんだ?」「1000リットルあります。」「1000リットルか。それじゃあ100倍に薄めて流してくれ。そのくらい簡単だよな、ポンプを買えば。」

確かに簡単なんです。毒物を溜めたタンクがあって、そこに1000リットル毒物が入ってる。

 

それを海水ポンプを使って、出口で量を測定しながら規制値の10分の1になるようにして流す。なんてことは簡単なんです。

そうすると、どういうことになるのかっていうのがみんなで検討されました。当たり前ですが、膨大な毒物を、膨大な海水でどんどん薄めて流していれば、そのうち海水は規制値以上になる。

海底に住む魚に影響

それから特に、例えば東京湾とか大村湾とか閉鎖的なところもあります。閉鎖的じゃない、オープンの港でも、割合重たいものを放出すると、それが海底の方に落ちて、海底の方ではあまり水が循環しないので、そこでずーっと停滞してる。

それを海底に住んでるヒラメとかカレイとかそういうのが食べて、それを海底から引き上げる。貝とかです。それが汚染されて人間が病気になる。底に溜まるわけです。

 

これは、こういうことをいちいちここで論じる、例として論じるんですが、専門っていうのはそういうこと、荒いことを考えるわけです。それは当たり前です。

だから社会に対して、日本の安全っていうのが今まで信用されてきたわけです。日本の人は「中国はいい加減なことをする。」と言います。

 

中国はどういういい加減なことしてるかって言うと、中国は中国なりに一応理屈があるんです。中国の方には悪いんですが、まだ現在のレベルは、薄めて流そうかが通るような状態なんです。

1つ1つは別です。また、役所がどのくらい規制するかもありますし。

技術者の倫理が後退する

こういうのはむしろ役所より工場運転側の倫理の問題なんです。なかなか全部を捉えることできないわけです。

例えば海岸線とか、川のほとりに何かを作る。小さな実験室で全然目立たない。しかしそこで毒物が発生する。川の水をポンプで汲み上げて少しずつ流せば、事足りるんです。

 

今でも日本でも、悪徳業者がやってる可能性はあるんです。だから難しいのは、この問題の、希釈して流したら良いっていう問題は、むしろ法律の問題より技術者の心の問題なんです。

それで、大体1980年くらいになりますと、今から約40年くらい前です。私、ちょうどその頃工場の運転をしていたんですが、日本の工場は非常に道徳観念が高かったんです。

 

つまり、「国民のために工場をやってるんだ。」もしくは「国民が認めてくれるから、我々は工場を運転できるんだ。」という社会的立場、企業の社会的責任っていうのが、非常に強くありました。

もちろん嘘もいけない。法律違反もいけないという風になってました。その頃私思い出すんですが、私の会社も非常にそういうとこはしっかりしておりました。

 

もちろん毒物を希釈して流すなんてことは絶対やりませんでしたし、むしろ全体が倫理観が高かったんです。

例えば、出張の時に特急電車に乗る。特急電車が2時間以上遅れると、特急料金が払い戻しになったんです。それを着服するっていう従業員がいたんです。

 

だって、着服する方にも理由があるんです。例えば、特急がそのまま動いたら、夜の23時30分に家に着くという予定だったところを2時間遅れたので、夜の1時30分になっちゃった。タクシーもない。

しょうがないから家族に電話して起きてもらって、深夜、家族に駅まで来てもらって、そこで家に帰った、なんてことがあるわけです。

 

だから、2時間も遅れたら、それは被害があったからだからってことを言い訳としては言えるんですが、それをやった人が処罰されました。僕の会社では。そういう時代になったんです。

だから、日本の技術ってのは世界に高く評価されたんです。つまりそういう雰囲気の中では、製品に欠陥のあるような物は出さないんです。

 

みんなで注意してますから。企業は社会のためにあるんだということは理解されております。

 

今回国も入って、高級な技術者、国の政策を決めるようなレベルの技術者も入って、そしてトリチウムを希釈して海の放出しようというようなことが検討される。

それだけで、日本の工業は崩壊したとも言えないことはないんです。特にトリチウムの半減期が12年ですから、12年ごとに半分になるんです。そこまでは誠意を持ってやらないと、ダメだと。

 

第1に水が増えないようにする。第2に日本の工業全体の信用性、今後の発展ということを考えれば、毒物を希釈して流すという例をここで作ったら、50年くらい日本の倫理はバックしてしまって、もう取り返しがつかないと私は思います。

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